先月、観客として足を運んだ中学生ハンドボール競技県大会。

ある中学校のキーパーが試合中にボールを手ではじいた際に、左手の指を抑え込み倒れ込みました。

コート外に運び出されたので、職業柄、思わず近づいてみると、更に選手は体育館外の医務室へ運ばれていく所でした、監督と思われる人と保護者と思われる方が選手の肩を抱え、「指が曲がっている」「折れている」と話をしているのが聞こえました。

しかし、救護班らしき人は見当たらず、思わず「お医者様や救護のスタッフおりますか?」と監督さんらしき人に話かけてみました。

応えは「いません」でした。

私は、自分が柔道整復師という事を伝え、承諾を得て診察をさせて頂くことにしました。監督さんも「ぜひ見て下さい」と。

医務室にて確認すると左手第四指PIP関節の背側脱臼でした。すぐさま整復すると選手は「試合に戻れますか?」と言ってきました。私は、立場上「やらない方がイイよ」とだけ言ってその場を立ち去り、試合の観戦に戻りました。

数分後、その選手はテーピングをしてコートに戻ってきました。

ハンドボールは、選手のコート入れ替えが自由で入ったり出たり可能なようで戻ってきました。中学生活最後の大会だったようで、どうしてもやりたかったのでしょう。

しかし、救護が居ない大会でこのような脱臼などをすれば、誰も整復が出来ず、それが脱臼だという事もわからず、きっと近くの病院に行ったり、救急車を呼んだりすることと思います。病院に行くまでに時間がかかり、脱臼などは病院では緊急性が無いと判断されてしまい通常の診察になって順番待ちですから、トータル4.5時間は脱臼したまま放置ななることも考えられ、処置が遅れれば徒手整復は難しくなり、手術となってしまう事もあります。手術ななると経済的にも社会復帰にもダメージが生じます、つまりその場で整復できる人間がいなければすぐにコートに戻るというのは不可能なわけです。

改めて、救護の重要性と我々柔道整復師の役目を再認識させられました。

今回は、すぐさま選手がコートに戻れる手助けを出来たことに喜びと誇りを持ちたいと思います。

そして我々がやるべきことは、柔道整復師の資格を持ちながら「整復ができない、経験がない」という者が多数存在することを改善し、社会的な認識として柔道整復師・接骨院=脱臼・骨折を整復できる資格・施設を定着させることが必要になります。

この捻じれている現実を変えて柔道整復師の価値を定着させたいものです。